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南京好日『線路は続くよどこまでも(涙)』(2)

中国の列車は、不夜城である。

440次 21:58西安発、11:57徐州着
新空調硬座普快

ぼくが苦心の末、手に入れた切符には、
確かにそう書いてあった。

・・・・2000年9月5日。

ぼくと友人は、その日西安を発って、
夜行で次の目的地である徐州に行く予定であった。
西安駅でやっとの思いで切符を購入し、
これからの夜行列車の旅に思いを馳せていた。

西安から徐州までは、約14時間。
当然、我々は寝台席の切符を買うつもりで、
相変わらず人で溢れ、
戦場のような西安駅の切符売り場の列に並んでいた。

紙に、

“440次。徐州まで。硬臥、なければ軟臥。二人”

と、心持ち“臥”の部分を強調して書き、
それを切符売り場で提示した。
服務員はそれを無言で受け取り、切符発行機に打ち込む。
切符はスムーズに発行され、
我々は希望の列車と座席をとれたと思い、ホッとした。
服務員は切符を我々に手渡し、我々は列を離れた。

しかし、甘かった!
ぼくらは、初心者の段階であったためか、
確認、という中国では欠かせない動作を怠ってしまった。

後の祭り、よく見てみれば、切符には、
寝台の文字は無く、座席の文字しか・・
つまり、“硬座”としか書かれていない!

“硬座”

確かに、寝台席を表す“臥”ではなく、
座席という意味の“座”である。

「まあ中国旅行話のネタになるか」と、
何でもネタにしてしまおうという気持ちのおかげで、
あとで泣きをみる羽目になったとは
このとき、到底わかるはずはなかった。

だいたい夜の10時に車内に入り、席を探す。
ぼくらの席は三人席の通路側。
向かいも横もすでに人民が座っている。
上に荷物をなんとかして置き、ようやく座る。

・・・・ああ、狭い。
しかも、座席は直角過ぎるほど直角。ほんとに硬い。
なによりも刺激的だったのは、
自分の周りに座っている中国人たちの顔ぶれだ。

ぼくの周りをぐるりと見てみよう。

横には、椎名○平をかなり人民風に調理して、
原型をとどめないほど炒めたようなニイちゃん。

そのまた横にはオッサン、
オッサンの向かいには30後半と思われるオバハン。
ぼくの向かいには、
そんなに大きくなくてもいいんではないか?と、
ツッこんでしまいたくなる程、
顔の半分くらいは軽くありそうな
大きなメガネをかけたおじいさん。

列車がホームを離れ、そろそろ動き出すか、という時に、
前方のほうで、窓に顔を押し付けて、
ホームに向かって叫んでいるハゲの若造がいる。
・・・どうやら別れを惜しんでいるみたいだ。

列車が駅を離れた後も、
さっきのハゲが天を仰いでウオーッッと、
叫びながら慟哭している。
思わずもらい笑い、いや、もらい泣き。

ああ、人の数だけドラマがある・・・と思いきや、
なにかざわめきを感じ、前を見ると、
例のハゲがうずくまるやいなやいきなり通路に
ゲロを吐き始めた!!

しかし、 周りの中国人は少し顔をしかめただけで、
何もなかった様に振舞っている。
さすがに、ハゲの向かいに座っていた人民は、
迷惑そうに何かつぶやきながら、乗務員を呼びに行った。
しかし、肝心のハゲは、ゲッゲッ・・と、
吐き終わるとスッキリした顔で、
何事も無かったかのように座席に座った。
乗務員がブツクサ言いながら、モップと水で掃除していたが
ハゲはどこ吹く風で窓の外を見ていた。

これこそが、人民のたくましさだ!!感動した!!
無頓着さ・傍若無人さ・図々しさ・自己中心、
なんぞ言う言葉は、ここでは不要である!!
これこそが、本能だ!!!

さて、そんなハプニングもありつつも、
人民列車はズンドコと進んでいく。

時間はそろそろ夜12時。
だが、一向に周囲の人民は寝る気配など見せない。

車内の電気は煌々とつき、全く消えるそぶりがない。
さらに、相変わらずひっきりなしに車内販売の売り子が
でかい声をはりあげながら狭い通路を行き来する。

当然寝れない。

ぼくの横のニイちゃん(キッペイ似)は、
売り子が通るたびに、
『ビール!ビール!』と、
インコの一つ覚えのように叫び、
ビールを購入しつづける。

そして、向かいのオバハンは、
セクシー極まりない、
いやむしろ凶器に近いほど太い足をさらけだし、
飯を食いながら横のニイちゃんとトークに花を咲かせる。

ぼくは、羊の数を数えてみたが、当然寝れない。

そして夜中の一時近くになると、
少しずつ車内は静かになった。
さて、ようやく寝れるか、と思った瞬間、
怪しい顔のオッサンがガサゴソ新聞紙を取り始めると、
座席の下に新聞紙を引いてもぐりこんだ。

しかし、誰もが何も言おうとしない。
むしろ、笑いながら歓迎している様に見える。
そして、オッサンは脂肪のたっぷりついたオヤジボディーを座席の下に収めた。
その太い足がどうしてもはみ出してしまい、
可愛そうにぼくの向かいに座っている
メガネの大きすぎるおじいさんは、
足を下ろせなくなり、座席に体育座りをするはめに。

そのおじいさん、どうやらあまりにも人がよすぎるのか、
そんな事をされても文句一つ言わず、
ぼくの目を見て弱々しく微笑んだだけだった。
おじいさんのあの時の目は一生忘れられない(笑)、
というか、もっと老人に優しくなれよ!!

さて寝るか・・・・ガラガラ・・・・!!

売り子が現れた!!!
売り子は先制攻撃をしてきた!!!
「ビールにおつまみはいらんか〜?!!」
相変わらず商売精神丸出して、叫んでいる。

隣のニイちゃんが身を乗り出し
「ビール!!」と唱えた!!!

そして夜三時半。
車内の明かりは心持ち暗くなっている。
ニイちゃんも疲れ果てたのか、イビキをかいて寝ている。
さすがの人民も眠っているらしい。

さて寝るか・・・キーィッ!!!

新たな伏兵の出現か!?と思ったが、
どうやら列車が止まったようだ。
パッ!と明かりが付き、
車掌がドカドカと大声を張り上げて乗りこんできた。
呆然としていると「切符切符!!!」
と言って一人一人に切符出せ!
と大声で検札し始めた。

再び、車内が騒然となる。
がやがや・・・・わいわい・・・・・・・

諸君、寝たいのなら、這ってでも寝台を選べ。



当社比この三倍は混み合っていると思って欲しい。


中国列車 乗り方 火車 切符の取り方 切符の種類



written by Bonkora

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