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南京好日『中国人の1945年8月』

日本の8月と言えば、終戦。

もうあれから60年近くが経とうとしている。
戦争を生で体験した世代がどんどんといなくなってきて、
まして、実際に武器を持って外国を転戦した人たちは、
1年前よりも大幅に少なくなっているだろう。

作者、25才。1978年生まれ。
むろん、戦争を知る世代ではない。

日本と中国。
いまや文化だけでなく、経済でも切り離せない両国。
だが、この前まで、戦争をしていた。
いや、日本が一方的に軍隊を送り込み、侵略していた。
それを、統治していたのだ、とか言い換えるのは、
ここでは全く無用の議論である。

噂では、日本が中国と戦争したことすらも知らないまま
中国に渡ってくる日本の若者もいるらしい。
それほど、長い時間が経ち、その記憶は風化してきている。
いや、ただ、それは彼らが無知過ぎるほど無知なだけにすぎない。

だが、ぼくは、それを忘れてはいけないと思う。
この記憶を、末代まで日本人のDNAに刻み込ませていなければいけない。

何も、過去にとらわれて居続けろというのではない。
また、中国にずっと戦争の事で卑屈で居続けろと言うのではない。
だが、少しでも中国に関わった人間として、
あまりにも、日本人はその方面の知識が少ないと思う。
それでは、無用のトラブルを生むおそれがある。

もちろん、中国の人間が、戦争に関して正しい知識を持っているとも思わない。
少なくともその歴史認識は、
大きく誇張され、歪曲されている部分が多いと感じる。

だが、中国人は、上から下まで日中戦争の事を知ってはいる。
たとえ、それが中学生であってもだ。

「日本はなぜ中国を侵略したのか?」

ぼくは、中国でその質問を中学生にまで聞かれたことがある。
この質問に対して、あなたは的確な答えを用意できるだろうか。
中国語の拙さもあったのだろうが、
ぼくに関しては、答えはなかった。
それがたとえ、
日本語であっても、答えられなかっただろう。

最近の、国粋主義的な戦争論を聞いていると、
第二次世界大戦というものに、
あまりにももっともらしい理屈をつけ、
その戦争の意義を正当化する議論が非常に多い。

だが、そこには、ある日突然よそ者に自分の家に乗り込まれてきた
中国の人たちへの想いがあまりにも欠けすぎている。

もちろん、現場では淡々と指示をこなしていかなければ、
自分の身が危うくなってしまう、という声もあるだろう。
だが、それは戦争に身を置いた人間の答えであり、
少なくとも、戦争後に生きる人間の答えではない。

幸い、人間には、学習する、という能力が備わっている。
それを、文字や絵図にして、後世に伝えられる。
あとは、後世の人間が、それをどう見るかだ。

それが、歴史だ。
そこには玉石混淆、様々なデータがあるだろう。
中には、とんでもないまがい物もある。
ウソや詭弁が飛び交い、時にはその中で
うんざりして埋もれてしまいたくもなる。
だが、まず、歴史の山に触れる。
そこから、選び出す。
そして、その選んだものが、あなたの歴史認識である。

あなたが考え抜いて、選んだものだから、それでいい。
しかし、生半可な知識だけで、相手を論破してはいけない。
それは、お互いの関係を深く傷つけ、
コミュニケーションを阻害するだけだ。
他の人が選んだものが、あなたのそれと異なっていても、
非難したり、否定したりしてはいけない。
あくまで、そういう考えもある、と受け止めて
有用な考えは自分の考えを補い、不要な部分は切り捨てるだけでいい。

何も分厚い本を読む必要はない。
テレビ、新聞、ネット、本、マンガ、なんでも教材はいい。
大切なことは、触れることだ。
そして、二つ以上のものにあたることだ。
そうすれば、自然と、歴史は身に入っていく。

もし、中国に行ってみようという人が、
ぼくの文章を読んでくれているのなら、
きっと、ぼくがこれから書く話は
歴史認識を身につける何かの参考になると思う。

ぼくは、中国に行き、南京、北京、東北地方と歩き、
各地の戦争関連の史跡を見て回ってきた。
そこには、ぼくの想像を超えた、
“中国の”歴史認識で作り上げられた
建造物、記念館がたくさんあった。

ぼくはこれを見て、あ、まずいな、と思った。
日本人にとって、1945年8月は、太平洋戦争の終戦だ。
だが、中国にとってそれは終戦ではない。
それは、“抗日戦争の勝利、日本帝国主義からの人民の解放”なのである。

まず、この考えを抜きにしては、中国との付き合いは成立し得ない。
日本人がどう騒ごうとも、歴史的なデータの裏付けがなかろうとも、
いくら間違いがあろうと指摘しようが、中国人は、こう考えているからだ。
小学生が使用する教科書から、大人が見るテレビドラマまで、
全てこのトーンである。

日本とは違う認識。
この“中国人の歴史認識”を是非、頭のどこかに残しておいていただければ幸いである。

まずは、それが、日中友好への第一歩であるからだ。

(次回つづく)

written by Bonkora

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