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南京好日『朋アリ遠方ヨリ来タル』(2)
ぼくの留学生活(2001年1月〜)の前半数ヶ月は、
正直言って辛かった。
周りに日本語の話せる友達がいない、
それが主な原因だったのだと思う。
もともと、日本人留学生が少ない南京師範大学を選んで
留学したのだから、それは仕方がないのかもしれないが、
それにしても、言葉も文化も風景も匂いも違う国で、
日本人の力にすがらず暮らしていくのがこんなに難しいとは
ぼくには思いも寄らなかった。
正直、さみしかった。不安だった。
また、留学生寮がいやだった。
南師大は、2人部屋。
これは、まだいい。
トイレ・風呂ともに共用。
これもまだいい。
だが、時間感覚・公共感覚・善悪感の異なる国や地域の人と
一緒に暮らすことがかくも難しいとは・・・
基本的に、武士は食わねど高楊枝、沈黙は美徳ナリ、
日本男児たるもの人前で高らかに笑うなんてはしたない、
と、古武士であるぼくにとり、
感情を全て開放して生きる他の留学生の生活は、
初物であり、また、なかなかなじみ難いものであった。
たぶん、慣れない生活で緊張もしていたのであろう。
中国でのはじめの一ヶ月の生活は、
そんな環境で自分の神経をすり減らし続ける、
非常に辛いものであった。
また、辛いときに、グチを言い合える、同言語の友達が
全くいなかったのも、それに拍車をかけていた。
この環境から脱しなければ・・・、
そうだ、引っ越ししようとぼくは思った。
それにはまず、留学生寮から脱出することだ。
ぼくは、さっそく学外に部屋を借り、
1人暮らしをすることにした。
幸い、とある大学の先生の一家が、海外に行くことがあり、
その空き家に住ませてもらうことになった。
(といっても、渡航延期があり、3ヶ月くらい同居していたけど)
留学生寮に入り、一ヶ月後には、
ぼくは新居にうつることになった。
そして、ティスマスとの共同部屋での生活を
終え、ドキドキ感いっぱいの1人暮らしを学外で
することになった。
ぼくが留学生寮の部屋を出る前の日の晩、
それまであまり交流があったとは言えなかったティスマスが、
手にワインとグラスを二つ持ち、外から戻ってきた。
フンフン♪ と、鼻歌を歌いながら部屋に入ってきたティスマスは、
ワインをのもう、と言ってきた。
「今日は、君が部屋を出る日だからね。
これからも、がんばってくれよ」
ティスマスは、誰も友達がいないと嘆いていた
ぼくのために、祝杯を挙げてくれたのだ。
友達は、なにも肌の色や、言葉、文化、歴史だけで
決まるものではないのに、
ぼくは、そんな事すらも分かっていなかった。
こんな近くに、ぼくの事を心配して、思ってくれている
友達がいたのだ。
肌は黒いし、メガネもずりおちているけど、
ティスマスは、ぼくが、彼の同居人として部屋に入ってきたときから、
ぼくを、友人として、遇していてくれたのだ。
ぼくは、誰も頼れる者がいない、と思いこんでいた
自分のごうまんさと、独りよがりさを恥じた。
ぼくは、1人ではなかったのだ。
written by Bonkora
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