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南京好日『朋アリ遠方ヨリ来タル』(3)

ティスマスはブルンディ人。

体はデカイが、 心は優しい。
いつもニコニコしている。
体はデカイが、 体は柔らかい。
いつも、腰がクネクネしている。
体はデカイが、
なぜかメガネはつねにずれている。
体はデカイが、
歩くとき、何か軽快なリズムを感じる。

そんな彼が、深刻な目で話してくれたそれは、
ぼくにとっても驚きだった。

ぼくが留学生寮を出るその日、
ワインを飲みながら、
ティスマスは自分の境遇を語りはじめた。

ティスマスは、中国で児童心理学を学んでいる。
だが、本当は、アメリカかカナダで学びたかったらしい。

しかし、ブルンディは内戦を抱えていた国であり、
その国の学生にたいして、
アメリカやカナダは奨学金を与えず、
受け入れの門戸を開いてくれなかった。

幸い、中国の奨学制度があったため、
彼は遠いアジアの未知の国にやってくる事になった。
彼が、児童心理学を学んでいるのは、
将来は、自分の国の子供達のために役立ててあげたい、
と思っているからだという。

アフリカの国だから、キリンや象がいるのか?
というぼくのつまらない質問に、

「ブルンディには、ライオンもキリンもいないけど、
 とっても美しい国なんだ。
 小さい国だけど、山もあって、川もあって・・・」

ぼくは、自分の国の事を嬉しそうに話す、
ティスマスのそんな姿を忘れる事ができなかった。

確かに、彼の国は、民族同士で争い、
彼の母親を含む多くの血を流してきた。
また、その戦いは、まだ完全に収束したわけでもない。

だが、ティスマスにとり、祖国はブルンディでしかない。
彼の目には、いつも、ブルンディの光景が映っている。
彼が、スイスに例えた、アフリカの小国の光景は、
一体、どのようなものなのだろうか。

ティスマスの一言一言には、
祖国への思いが込められていた。
4年以上という長い留学生活。
帰ろうと思っても、簡単に帰れる距離でもない。
いつでも彼は、
国に帰りたいという気持があったのだろう。

だが、学ぶ事を最優先し、
遊びもほとんどせず、生活も質素なままで、
他の遊園地感覚で遊び呆けるバカな留学生を後目に、
本当にストイックな生活を送っていた。
そして、学問を、中国で修めた。
それは、ブルンディの子供達のためでもあろうし、
また、彼が立派に帰ってくることを待ちこがれる
家族たちのためでもあろう。

2004年7月、長い長い留学生活を終え、
ティスマスは北京から帰国した。

何年ぶりかに踏む祖国の大地。
どうかティスマスが心から笑えるような
平和がそこに待っていて欲しい。


   -完-

written by Bonkora

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