破綻都市から考察する中国の現状

広大な土地を有し、人口13億の超巨大国家中国。

近年発展が目覚しく、日本国内では”中国脅威論”までもが出始め、
日本のみならずアジア周辺諸国にも影響を及ぼしている。

確かに中国の発展は目覚しい。
毎年7%以上の成長率を維持し、国民も我が国は経済大国であるという 勘違いを起こすまでに至っている。

しかし、ちょっとでも中国について知っている人や或いは
実際現地に行ってこう感じた人も多いだろう。 中国って沿岸部だけしか発展してない

確かに一部の地域は発展している。
我々先進国の外国人が旅行しても不便に感じないエリアがある。

しかし、やはり沿岸部だけ。
事実統計としてあらわれている数字を見れば一目瞭然である。

北京、上海、広東省等の都市と四川省や貴州省のような内陸の都市を
GDPで比べてみると、次のようになる。

上海28,326元、北京18,423元、広東省11,184元、四川省4,231元、貴州省2,323元。
これをみれば分かるように、上海と貴州省との間で平均所得格差は何と20倍以上開いている。
(中国情報ハンドブック・98年データ)

これは恐ろしい数字だ。
実際に中国の色々なところをまわられたことがある方ならよくお分かりだろうと思う。

まず一番中国内を旅行してて気づくのが物価。
飯を食ったり、宿に泊まったりする時などにその土地の物価が高いのか低いのかが分かる。

私が一番物価の目安としているのがタクシーの初乗り料金。
私はその都市の経済発展度、人民の所得がいくらくらいなのかが
このタクシーの初乗り料金にて大体分かる。

全国で一番高いタクシーの初乗りが北京、上海、蘇州等で10元(2005年の今では深センの25元が最高)。
んでもって、一番安いところで私は3元まで知っている。
タクシーの初乗り料金を見てもすぐ分かるようにこれだけの開きがある。

タクシーも内陸に入れば入るほど大抵安くなっていく。
ちなみに3元は安徽省の和県てところとその付近一帯で遭遇。
タクシーすらないなんてとこも多々ある。
現代人にとって物価指数こそ一番分かりやすい物はない。

というのも実際の物価を目の当たりにして痛感できるから。

さて、前置きが長くなってしまったが、
前に挙げたその都市の経済発展度・人民達の豊かさを測るものとして
タクシー料金の事などについて述べた。
しかし、他にもその都市の経済発展的なものを見て取れる
ことが出来る。お分かりの人も多いだろうが、それはその都市の見た目・雰囲気。

実はこれが物価云々言う前に、実際に現地に降り立って真っ先に感じることであろう。
きれい、汚い、臭い、活気、人民達の目付き・表情等ある程度の
発展している街ならば、人々の生活はそんなに切羽詰っていないし、
その人たちの表情も自然と明るくなる。

逆にそうでなく、人々の生活は貧しくその日暮をしているような人たちばかりな
都市は、人々の表情も暗くそして怖い。まじで真剣に怖い。

着ている服はぼろぼろで破れまくっていて、
髪の毛はぼさぼさで汚く虫が髪の毛の周りをぐるぐる回っている。

こんな人民がうろうろいるような所に着いてしまったら、
どうしようもない絶望感に襲われる。

普通に旅行してる我々が命に危険を感じる時だってある。
(誇張ではないですよほんとに。でも普通の人はそんなとこに行きませんけどね・笑)

そんな所で「私は日本人です」なんて言ったらどうなるか分かったもんじゃない。
それと中国語が全くできない人が行くような所でも決してない。
行ってはいけない。

そういうところが私の言う破綻都市なのである。
あまりに生活が不安定な為、人々はいらいらし喧嘩もよく起こり
それが殺人に発展したりするのもしばしば。

大抵の貧しい生活を余儀なくされそれから脱却したい人民達は
民公(出稼ぎ労働者)となって大都市に移動していく。

しかし、それすらできない人々たちもいるわけで、
現在中国は深刻な地域間の所得格差問題に悩まされている。

そんな都市はやはり見た目どおり、統計データで見ると貧しい。
歴史的に昔から貧困にあえぐ安徽省、河南省等は代表例である。

しかし、近年河南省は貧しいというイメージがどんどんなくなっていってるかの如く、
発展が目覚しく、安徽省程の”貧しい”というイメージはない。
貧しいのは貧しいのかもしれないが、人々の表情はまだ明るい感じがする。

それに比べやはり安徽省はやばい。
省一般に安徽省の都市は省都の合肥を除き二つのタイプに分かれると思う。

一つはどうしようもないくらいの破綻都市、
もう一つは田舎すぎて自分達が他のところと比べて
貧しいということすら気づいていない(笑)全然あんぱいな都市のふたつ。

代表例を挙げると、破綻都市なら和県、馬鞍山、無湖、安慶付近、淮北、
あんぱい都市なら無為、廬江等。こう見ると安徽省の南部の特定地域が特に破綻しているということになる。

蘇州滞在時、安徽省出身の中国人に
「安徽省北の河南省近くの地域はやばい。中国人すら近づきたくない所」と
聞いたのでそこ付近に初めて行く時、非常に緊張した。

しかし、実際に行ってみるとそうではなく、逆に意外に発展して
いたくらいだった。
(でも人々の見た目・目つき・表情は異常に怖いのは変わりない)さすがに淮北はめちゃくちゃ怖かったけど・・・笑)

逆に、和県や馬鞍山、安慶等の合肥以南の地帯は何故そんなに雰囲気が悪いのか?
和県の場合だと、人民の話によれば和県にはたいして核になるような産業が存在せず、
人々は全く仕事がない為生活苦に陥っているらしい。

馬鞍山はよく分からないが、工業都市であるのが一つの原因だろうか。
河北省や山西省等もそうなのだが、工業都市っていうのは街の雰囲気が悪い。
街中に煙等の工場廃棄物が覆い、天気がどんよりとしている。

ここらへんは今一確証が持てないのだが、多分それが関係しているように思われる。

安慶は合肥以前の省都だったのに何故なのか?それは安慶の地理的要因にある。
列車の時刻表と地図を照らし合わせながら見てもらえればよくお分かりいただける
と思うのだが、例えば上海から淮南までの列車があったとしよう。

その列車はどういったルートで淮南まで行くかというと、
上海-合肥-安慶-淮南とおおよそこんな感じでものすごい遠回りをしていくのである。
現在は合肥が省都ということもあり合肥から淮南方面、
更に北へ行く線路が延びているし、列車の数もすこぶる増えた。

しかし、安慶が省都だったような時期には線路は先に挙げたルートしかなく
非常に不便だった。
それで省都が合肥に移ってしまうと、かろうじて省都として機能していた安慶は
その存在価値がなくなっていきすたれていった。

様々な工業計画や都市計画は途中で放り出されたままで現在に至っている。
その為人民達の生活は苦しく、都市の雰囲気は悪い。

出稼ぎ労働者もここの人間が結構多いと聞く。

私が一番ショックを受けてしまったのがその安徽省での子供を親が売っているのを
目の当たりにしたことだ。

中国人にこのことを言うと誰も信じようとはしないのだが、
私は実際に見たのである。しかも
「500元、要不要?」(500元でどう?)
と実際にみすぼらしいおばさんに言われたのだから嘘もくそも無いし、
脚色しようがない事実である。

それに中国に対して悪意を持ってでっち上げをしているわけでもない。
さすがにこれには参ったと同時に中国が抱える大きな問題を改めて実感した。

しかし、政府はこのような現状を把握してるかどうかは知らないが、
こーいう問題の報道は全く無いように思われる。

今、中国は全世界が不況にあげく中、中国ただ一つが驚異的な成長を見せ我が国は
順風満帆であるということを装わしているのかもしれない。

私は中国政府批判をするつもりは全くないし、その権利も外国人である私には
微塵も無い。

しかし、私は一人の人間として、自国内に自分の子供を売ってまでしないと
生きていけない人々たちがいるということを中国人の方々に知っておいて欲しいと思う。

こんな悲しいことがもっと少なくなるように。

ちなみに子供が男の子で売れなかった場合は捨て、
女の子の場合は売れなかったら売春宿に売られて育てられるらしい。

漢民族エリアである安徽、河南、湖南省等の地域が貧しいのだから
内陸にある少数民族地域に関してはもっとも言うまでもない。

では一体どうしてこのような沿岸部と内陸地域との所得格差が広がってしまったのか?
地理的条件、歴史的条件、インフラ(狭義において鉄道、道路、空港等)等の
条件も多々あるのはあるのだが、一番の要因としては沿岸地域優先主義による弊害が挙げられる。

中国における経済発展は1978年以降の改革・開放政策により、
1980年に指定された、深(土川)・珠海・スワトウ、アモイ、
1988年に指定された海南島の五つの経済特別区から始まった。

これらの地域に進出する海外企業に対して、減税・免税を主体とする
優遇措置をとり海外からの投資を誘致することに力を注いだのである。

その結果中国経済全体の推進にある程度の役割を果たしたのであるが、
沿岸地域への外資企業誘致ばかりに目を向けてしまった結果、
国内産業の育成に目を向けることに疎かになり、経済発展の中から
内陸地域のみが取り残されるという弊害が出てきてしまった。

中国政府の考え方としては多分、発展させやすい沿岸地域から発展を進め、
それらの地域を牽引車として他の地域の成長を実現させるというものだったと思うが、
現実には明らかにうまくいっていない。

普通発展が進めば進むほど、一極集中が進むというのはありふれた現象であり、
日本にしても首都の東京に全てのものが集中しそれが問題にもなっている。

貧しい地域に住む人々が生活する為に都市に出て出稼ぎをしようとするのは、
どう考えても当たり前で、中国の場合にもやはりそれはあてはまる。

この流れを止めようと中国政府はしてるみたいだが、
それは土台無理というものだ。

この問題を根本的に解決する為には、そいういう内陸の地域を
どのように発展させるかが問題だ。

最近中国の内陸地域がキャンペーンを実施して対外投資を呼びかけてはいるが、
やはりそれに乗ろうとする国は少ない。

普通考えれば、たださえ不便な国に於いて更に不便な土地まで行き、
投資・土地開発をするなんてするはずが無いし、
投資する側としても全くメリットがない。
つい昔昆明で花の万博が行われ、昆明も対外的に投資を呼びかけた。
しかし、万博の入場者予想をはるかに下回る入場者しかこなかったことからも
分かるように、僻地での開発をしたがる関係者は少なかったということが窺える。

これらの内陸地域と沿岸部地域の格差を埋めることはまず短期的には不可能であり、
たとえ長期に行ったとしてもとてつもない金が必要となる。
インフラももっと整備しなければならないし、そういう体制を作らなければならない。

しかし、現在中国政府は多大なる財政赤字に直面しておりそれどころでは ないという側面もある。
それゆえに外国からの資金頼りにキャンペーンを行い誘致しようとしている。

しかし、中国側の無責任で自分勝手な態度や行動により損ばかりさせられてきた
外国企業は最近では乗り気ではなく、うまく利用され続けている日本企業でさえ
冷ややかに見ているという。

もし、中国が外資により内陸を開発しようと思うなら、
そういう体質から脱却し誠意を持って外国に頼ることが必要かと思われる。

利用するだけしてポイではいくらなんでも誰もついてこなくなるのは当たり前である。
これからの中国側の対応に期待したい。

written by KEN 2001.6


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