オランダ人

 時は2002年の夏が終わろうとしている北京でのこと。
その北京で滞在中に出会った人で最も濃かったベスト3の内のベスト2に入るオランダ人の話をしよう。

 俺が北京国際飯店のユースにチェックインしたのが9/9。一夜明けて俺のベッドの前に入ってきたのがそのオランダ人の爺ちゃんだった。目が合うと『Hi!!』と声をかけてきたけど、すぐにベッドにもぐりこんで就寝モードに突入。時々咳き込みながらだるそうな表情を見せている。今にもお花畑にでも行ってしまいそうな感すらある(オイオイ)大丈夫かいなと心配しつつ自分はマクドへ行き朝食をとりに行った。

食後部屋に戻るとオランダ人が起きており、話しかけて来た。
『Where are you come from?』『Japan,I'm japanese』とおきまりの会話でスタートしたのはいいが、このじいちゃんすげー。何がすげーかって言ったらなまりがすごいのよ(笑)オランダは公用語がいくつもある国で、オランダ語自体ドイツ語の影響をかなり受けているので彼の話す英語もそれが色濃く反映されているのだ。英語の"g""v""w"等の発音がもろにドイツ語発音になってて、”GOOD”が”GUTE”って言ってるし、"VERY"なんか”フェリー”やもん。俺が大学で二年間ドイツ語勉強してへんかったら分からへんぞそれは(^-^;;

ただなまりがすごいだけではなく、彼の旅の話を聞いてもっと驚いてしまった。彼は何と旅を始めて三年らしい。カナダから始まり、アメリカ、メキシコ、南米、インドネシア、シンガポール、タイ、ラオス、ベトナム、中国、モンゴル、そしてまた中国に戻ってきたというのだ。もともと沢木耕太郎氏の『深夜特急』のような旅に憧れて旅をしている自分にとって、このような話をきかされればすぐに崇拝してしまいそうになる。”この人神様や〜♪”って。しかし次の話を聞いた瞬間に私の中ではその神様はただのネタ満載のあほたんになった

彼はモンゴリア(Mongolia)で一ヶ月滞在していたらしいのだが、食事が全然おいしくなくて体重が一ヶ月で10kg痩せてしまったらしい。確かにモンゴルといえば羊料理ばかりで旅行者にとっては口にもお腹にも合わないという話はよく聞いている。このオランダ人の爺ちゃんも相当それに悩まされたらしい。ところがこの爺ちゃんモンゴルを出て北京に入った瞬間狂喜したそうだ。何でかって?そりゃあさあマクドナルドがあるからだって(笑)以下は彼の証言を元に当時を振り返ってみよう

『Mongolia,food is not gute(正しくはgood).I lost weight 10kg.But China has MACDONALD!!MACDONALD,Beef,chicken,pork,potato,mayoneze,coke.
MACDONALD gives me POWER-POWER-POWER-!!!

モンゴルの飯はまずくて10kgも体重が減ったけど、中国は最高だ!何たってマクドナルドがある!!マクドナルドは牛肉、鶏肉、豚肉、ポテト、マヨネーズ(!?)、コーラがある。マクドナルドは俺に”力”を与えてくれる。いいかパワーだパワー!!

おおよそにしてこんなことを言っていた。とにかくモンゴルでは羊以外の肉が食べれなくてパワーがなくなったらしい。どうでもいいがそんなちょっとしたことを話すのにリポビタンDの宣伝みたいなガッツポーズで”POWER!!”って叫ばないでくれ、笑いすぎて腹が痛いんやけど(笑)たったそれだけのことを言うために60過ぎの爺ちゃんは過剰なるまでのジェスチャーにより大量の汗をかいているのを見るとこっちはどうしたらいいか分からなくなる(^-^;;

んで次の日。昼過ぎに部屋に戻ってくると、オランダ人の爺ちゃんが大量の写真整理をしている。俺が覗きこむと写真を見せてくれた。『ビューティフォー』を連発している爺ちゃんにモンゴルはどうだったと聞くと、最初は写真を見せながらビューティフォーを連発するが、食べ物の話になると、ムンクの叫びみたいな顔をして、『Mongolia's food is not gute』と言いまたもやその後マクドナルドの素晴らしさをリポビタンDの宣伝並みの熱さとジェスチャーで『POWER!!』を30回くらい叫ばれた(大爆笑)しかも彼は、服をめくって腕を見ろといいながらマクドナルドのおかげで元に戻りつつある自分の身体を俺に誇示し始めた。しかも今度はボディービルのポーズで!!




頼むやめてくれ!!俺は笑い死ぬ!!ドラエモ〜ン




その話の終わりに彼は少しうつろな表情でこう言い放った。

『NO MORE MONGOLIA』(モンゴルもういや)








・・・って

いやなんかい!!






しかも彼の一日の食生活聞いて驚くなかれ。毎日三食マクドナルドっす!!
はい、すごいことにあきれることに
毎日三食嬉嬉とした表情でマクドナルドのハンバーガー食っちゃってます彼

一体何しにきてんねんあんた(号泣)そんなにモンゴルはきつかったか、いやそうやろうなあ。ふと中華料理はどうなんだろうと思って聞いてみる。答えはこう

『Chinese food is not good!』

チャイナも駄目かい!!そりゃマクドで嬉しそうな顔してくっとるわい。逆に栄養失調にならないか俺が心配するくらいだ。

ところでオランダ人は”Dutch”とこのように書くが、我々日本人は普通に『ダッチ』と呼んでしまう。あまりにその言葉を発するとある人形を思い浮かべてしまう危険な言葉だ(ひー、げすくてごめんなさい)ただ彼が言うには、正確な発音では『デュッチ』となるそうだ。”u”がドイツ語で言うウムラウトの音になるので『デュッチ』と発音しなければならない。何故か俺は正しい発音練習をさせられる羽目になり、五分間のうちに『デュッチ!デュッチ!デュッチ!デュッチ!』と狂ったように連呼した。連呼するたびにあの”オランダの奥さん”人形の姿が思い浮かび、ああ俺は何て不潔な男だと自己嫌悪に陥ってしまった。この連呼させられている時の俺の気持ちわかる人いる?ほんまね、笑うに笑えず、頭の中では変なものが浮かんでくんねん。あれはほんまに参った(笑)

その後北京の繁華街王府井で出会ったり、色々話をしたがどうやら彼はインドネシアの旅が終わったとき一度オランダに帰っているらしい。
ていうかあんた三年旅してるって嘘やんけ!!(涙)

そんな彼も9/15に夜の列車で大同へ向かうことになった。マクドがないと生きていけない彼のために俺と同室の台湾人系アメリカ人が忠告をした。
『大同にはマクドもチーズもあらへんよ』

その話を聞いた瞬間爺ちゃん顔の表情豹変。『ほんとか!?それはいかん』と言って駆け足で向かいのスーパーへ行って大量の食パンと”デュッチ”チーズを買い込んできたではないか!!唖然とする我ら二人に彼は言い放つ『ホランドチーズ、POWER、POWER、POWER!!』




俺『北京にはまた来たい?』

オランダ人『NO MORE BEIJING!!』(北京はもういや)






俺はひたすら笑うことしかできなかった。彼と過ごした日々はずっと腹痛だったのは今でも記憶に新しい

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